シリーズ みらいへの教育

大丈夫、死ぬには及ばない

今、大学生に何が起きているのか

稲垣 諭

 

単行本(四六判 ソフトカバー): 256ページ
定価:本体2000円+税
ISBN-13: 978-4905374893

発行日: 2015/10

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香山リカ氏が絶賛!

「テツガクと大学とリアルと心理学がつながった!
 こんな本は初めてだ」

拒食嘔吐、自傷、強迫、SM、幻視、離人、倒錯、死への憧憬……。
「心身の事故」を生き、死の淵をのぞきこむ大学生の日常に伴走した
気鋭の若手哲学者が提言する異例のケアの記録にして、意表を突く「癒しのテツガク」!

「リスカ、やっぱり、やっちゃうのか?」
「やめたいけど、どうすればいいのか分からない。どうしても切りたくなる。」
「じゃあ今度、付き合いたい男を見つけるときには、
 切らせてくれる彼氏を探すように。」
自傷、SM、拒食嘔吐、幻視、離人、倒錯、強迫、死への憧憬……。
大学生は、大人たちが想像もできない日常を生き抜いている。
生きることは、苦しい。ひとは、不自由だ。でも気づいてほしい。
きみの魂は、シブトイ。傷みうつろう日々にも、生きていることのかすかな、
でも確かな感触がきみのなかにはあるはず──。

「心身の事故」を生きる大学生に伴走した、気鋭の若手哲学者による異例の
「臨床哲学」の記録であり、「心の回復力(レジリエンス)」を育てる
「事故と自己の現象学」からの提言!

カバー装画に浜崎あゆみのCDジャケットで知られる人気イラストレーター、
宮島亜希氏の作品を使用!


■著者紹介
稲垣諭(いながき・さとし)
1974年、北海道生まれ。青山学院大学法学部卒業。
東洋大学大学院文学研究科哲学専攻博士後期課程修了。
文学博士。
専門は現象学・環境哲学・リハビリテーションの科学哲学。
東洋大学文学部助教を経て、現在、自治医科大学教授。
著書に『衝動の現象学──フッサール現象学における衝動および感情の位置づけ』(知泉書館)、
『リハビリテーションの哲学あるいは哲学のリハビリテーション』(春風社)が、
共編著に『エコロジーをデザインする──エコ・フィロソフィの挑戦』(春秋社)、
『エコ・フィロソフィ入門──サステイナブルな知と行為の創出』(ノンブル社)が、
共訳書にE.フッサール『間主観性の現象学──その方法』(ちくま学芸文庫)、
荒川修作+マドリン・ギンズ『死ぬのは法律違反です──死に抗する建築 21世紀への源流』
(春秋社)などがある。

 


■目次
序 章 大学生の数奇な日常
ある学生の告白
「私のこと、分かりますか?」
手首を切る、肩口を切る、そしてタバコの火を……
光が怖い
魂のしぶとさ
「死ぬには及ばない」──アーティスト、荒川修作の実践/脱力の哲学

第1章 幸福な「痛み」
痛みに支配される
痛みと辛さ
不愉快なほどの悦楽
意識を外れていくもの―─痛くない痛み
心の疑似的な安定化

第2章 「自傷」の玄人(ルビ:プロ)
癖とケアのあいだ
強迫という経験
切りつづけるなかで心が安定する
自傷の入り口─―「切ってみました」
「最近、切っていないなぁ」
なぜ自傷行為は反復されるのか
自傷を忘れる日のために

第3章 「離人」、静けさのなかにたたずむ
身体という事故
離人感と現実感消失症
世界がシャットダウンする
離人を手なずけるには
武器
としての離人

第4章 ひとは「嘔吐」する
健全な吐き気
吐き気をもたらすもの
吐き気を覚えて人間になる
かぐや姫の戦略
美の皮肉と吐
きつづけるもの
倦怠とユーモア
泣くことで能力を発揮する者たち

第5章 「倒錯」を友とするもの
倒錯の境目
「裸の王様」で一番バカなのは誰か
裸になりたいという欲望
学生のなかに「女王さま」がいた
「首輪をした男を連れてカフェに……」
笑いとこわばり
うんこの暴言

第6章 わたしの大切な他者、「小人」
コインのお月様
小人に出会うには?
移行対象
ヌイグルミを持つ学生
対象(a)という経験
何もない、空っぽの私
口に出してはいけない
まなざし、声、乳房、糞
対象(a)を活用する

第7章 死という「コトバ」に取り憑かれる
世界という枝葉に引っかかった生
死というコトバ
動物にも生と死はあるのだろうか
死に憑かれる者
太宰の毒
死の対話
山に取り憑かれる
死にそびれた生

第8章 標的に飢える「敵意」
他人が住む世界に怯えて暮らす
心の開き方
敵意の宛先
攻撃してくる者
「どうも好きになれない講義です」
アイデンティティの行方敵意がうごめく場所

終 章 「経験の事故」のなかで、「自己」は新生する
学生はなぜ赤裸々に語るのか?
経験の事故と自己
私は一度死んでいる
レジリエントな心―─心の関節と可動域
本書は何を行なってきたのか?
心の細菌になる


 

 

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